日本再発見ノート Rediscover Japan. 

株式会社さとゆめ・嶋田俊平の日々の思い、出会い、発見

麦と「はだしのゲン」


(出典:NAVERまとめサイト

練馬に引っ越してきて、身近にある農の風景に驚かされたり、癒されたりすることが多々あるが、一番嬉しかったことは、麦畑があったことだ。しかも、毎朝の通勤路のすぐ脇に。

秋まきの小麦なのだろうか、2月に私が引っ越してきた頃は、背丈の低い雑草のような感じだったのが、4月に穂が目立つようになり、稲の田植えが行われる5月中旬から6月上旬にはまさに「金色の野」が広がる壮観な眺めになった。そして、先々週くらいに収穫されたようで、何もない野に戻っていた。

私にとって、麦と言えば、「はだしのゲン」である。

小学生の頃、タイのバンコクに住んでいたのだけど、当時、タイ語に訳した海賊版の日本の漫画は沢山流通していたけど、全く読めなかったので、かなり日本語の漫画に飢えていた。

そんな自分にとって、当時通っていた日本人学校の図書館に置いてあった唯一の漫画である「はだしのゲン」全十巻は、「日本語の漫画」欲を満たしてくれる貴重な存在だった。

昼休みに図書館に行っては、床に座り込んで何度も何度も繰り返し読んだ。全10巻を通しで10回くらいは読んだのではないだろうか(大袈裟ではなく、それくらい読んだ)。

その「はだしのゲン」の中で、戦時中のひもじさや、非国民の子としての虐めや罵りに負けそうになるゲンに対して、ゲンの親父さんが諭す時にいつも出るのが、麦の話なのだ。

  ゲンよ
  麦はのう 
  寒い冬に芽を出し
  何回も 何回も踏まれ
  根を大地にしっかり張って 
  まっすぐに伸び
  やがて豊かな穂を実らせるんじゃ…
  おまえも 麦のようになれ
  踏まれても踏まれても
  たくましい芽を出す麦になれ

そんな親父さんの言葉は、ゲンが置かれていた悲惨な境遇とはかけ離れているが、なんか当時の自分に対しての励ましにも聞こえて(小学校の頃は身長もクラスで一番低く、九九や漢字を覚えるのもビリけつで、先生から怒られてばかりの日々だったので・・・)、頑張ろう!と思ったりしたものである。

この親父さんの「麦話」は、自分にとって、座右の銘的な大切な言葉なのである。

そんなこんなで、毎朝駅に向かうときに、日に日に大きくなる麦を見ては、ゲンの親父さんの言葉と、小学生の頃の自分を思いだしたり。また、仕事でちょっとうまくいかないことがあったときは、また頑張ろうと気が引き締まったり。

残念ながら、今はもう刈られてしまって、何もないのだけど、秋にはまた種蒔きがされるのだろう。そして、またたくましい葉と豊かな穂を持った姿を見せてくれるのだろう。その日がとてもとても楽しみである。

以下、ちょっとした定点観測の写真です・・・

  • 4月27日

  • 5月12日

  • 5月30日

  • 6月4日

  • 6月13日

  • 6月16日

  • 6月20日


〔コミック版〕はだしのゲン 全10巻

〔コミック版〕はだしのゲン 全10巻