日本再発見ノート Rediscover Japan. 

株式会社さとゆめ・嶋田俊平の日々の思い、出会い、発見

柳橋歌舞伎

3年間仕事で通った福島県で、農村歌舞伎「柳橋歌舞伎」(郡山市中田町柳橋地区)を鑑賞したことがある。

お世話になっている人が、江戸時代に始まり脈々と継承されていたものの一時期途絶えていたこの歌舞伎を復活させたメンバーの一人で、今回是非にと誘ってくれたのだ。

夕方4時半。お客さんが、歌舞伎小屋の前にぞろぞろと集まってくる。道の端にはのぼりがたち、広場には夜店が出、お囃子も聞こえ、さながら盆踊りの前のよう。

やがて、日が落ちはじめると、演目が始まる。これは、地元中学生が演じる「白浪五人男 青砥稿紅彩画 稲瀬川勢揃いの場」。みんな凛々しい。

日がとっぷり暮れた頃にクライマックスの「菅原伝授手習鑑 寺子屋の場」が場を引き締め、最後は満場の拍手で幕を閉じる。

農村歌舞伎はもちろん、歌舞伎自体初めての体験だったが、こんなにもエンターテイメント性の高いものとは想像していなかった。

なにせ、笑うべきところを役者さんが「ィヨォッ〜ッ!」と誘導してくれ、観客も「ィヨッ!」てなもんで掛け合いが始まり、いつの間にやら盛り上がっていく。そして最後はお涙頂戴。

農村歌舞伎ならではの愛嬌も感じられた。

音響は割れるし、雨がぽつぽつ降ってくる。子役は転ぶし、舞台の袖から待ち役の顔が覗く。その一方で、演技はきちんとこなすし、迫力は満点。ドラマとドキュメンタリーを一緒に観ている感じだった。

今も全国200以上の地域で農村歌舞伎が継承されているようだ。是非、お近くの歌舞伎を覗いてみてください。きっとはまります。