グローバル化の終わり、ローカルからのはじまり(吉澤保幸著)
先週、富山に出張した際に道中に「グローバル化の終わり、ローカルからのはじまり(吉澤保幸著)」を読んだ。(ちなみに、上の写真は、越後湯沢をほんの少し過ぎたあたりの風景。新幹線駅のまわりにこんな風景が広がっている。素晴らしい。)
- 作者: 吉澤保幸
- 出版社/メーカー: 経済界
- 発売日: 2012/03/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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法政大学の中嶋先生に推薦してもらった本。バタバタしていて、ゆっくり読む暇が無かったが、ようやく読むことができた。
経済成長志向やグローバル化、巨大な金融システムを批判する本はいくらでもあるけど、その人なりの現実的な代替案(オルタナティブな社会像)を示した本は少ない。
この本はまさに、オルタナティブな社会像を明確に示してくれている。日本銀行に20年以上勤務し、今の金融システムの表も裏も見尽くしてこられたからこその提案。
と言っても、今の社会を完全に否定しようとするのではなく、じわじわともう一つの社会を広げていくことで、今のグローバリゼーションでカバーできないところを掬っていこうというスタンスが共感できた。(ちなみに、吉澤さんは、場所文化機構というNPOをつくり、各地で地域再生プロジェクトを立ち上げられて、オルタナティブな社会づくりを実践されています。)
冒頭に以下のように書かれている。
そうした希望を生み出すキーワードは、自分なりに考えますと、そのローカルが持つ「場所文化」、グローバルな金融に負けない「温かなお金」、そして何よりも優先する「いのちの持続」という三つです。
この中でも、特に「温かなお金」に対する提案が、(さすが金融に長く携わっておられただけあって)面白かった。
(1)長期間にわたって価値を生んでいく実物財や自然資源に「投資する(=貯留する)」使い方
→短期複利から脱却し、長期単利ないし無利子へ
→利子、配当は、お金ではなく、「現物」などでの報酬に変える仕組み
→ハンズオンブレーンなどの仕組みを創設し、ソーシャルビジネスに経営ノウハウを提供
(2)お金を温かく「扶助する」使い方
→現代版の講や無尽を再構成。(たとえば、20人で「何か問題が起きたときには、50万円ずつ出そう」というような約束事を結ぶことによって、1千万円の融資が可能に)
(3)お金を、いのちをより円滑に結ぶために「まわしていく」使い方
→地域通貨(利子無し、あるいは減価していく)の仕組みを、法定通貨と並行的に活用
これだけを見ると、そんなこと言ってもうまくいくの?と思われるかもしれないが、吉澤さんは、すでにこういった仕組みを使って具体的なプロジェクトを多数成功させてきているので説得力がある。
これからソーシャル・ビジネスに取り組もうとされている方に特におススメです。
ぜひ読んでみてください。