「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」に行ってきました。
GW3日目、東京ミッドタウンで開催中の「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」に行ってきました。
ミッドタウンのビルの横の芝生では、沢山の家族連れや観光客が寝そべったり、お弁当を食べたり、思い思いの時間を過ごしていました。いい空間、いい時間。
テマヒマ展の会場は、芝生広場の横に立つ展示館「21_21 DESIGN SIGHT」。打ちっぱなしのコンクリートといい、光の取り入れ方(と言えるほど知りませんが)といい、安藤忠雄チックだなあと思って、後で調べたら、やっぱり安藤忠雄建築でした・・。
21_21 DESIGN SIGHT - Wikipedia
21_21 DESIGN SIGHTでは4月27日より、「テマヒマ展〈東北の食と住〉」を開催します。本展は、東日本大震災を受け昨年7月に開催した特別企画「東北の底力、心と光。 『衣』、三宅一生。」に続き、三宅一生とともに21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務める、グラフィックデザイナー 佐藤 卓とプロダクトデザイナー 深澤直人の視点から、東北の「食と住」に焦点を当てるものです。
タイトル:「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」
会期:2012年4月27日(金)〜8月26日(日)
主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
後援:文化庁、経済産業省、青森県、秋田県、岩手県、山形県、宮城県、福島県、東京都、港区
特別協賛:三井不動産株式会社
展覧会ディレクター:佐藤 卓、深澤直人
企画協力:奥村文絵、川上典李子
映像制作:トム・ヴィンセント、山中 有
写真:西部裕介
企画展 「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」
空間の使い方といい、展示物といい、素晴らしいものでした。
この展覧会のために、ディレクターの佐藤卓氏、深澤直人氏を始め、映像作家、写真家で構成されたチームが、何度も何度も東北に足を運んで、リサーチを重ね、映像やもの(食や道具などの実物)を集めてこられたそうです。
食に関するものとしては、麩、津軽飴、打ち豆、凍み餅、凍り豆腐、山菜、干し菊、大根、縄干しいわな、いわしの焼き干し、駄菓子、笹巻き、きりたんぽ、稲庭うどん、干し柿・・・
道具としては、曲げわっぱ、秋田杉桶樽、会津桐たんす、柏戸いす、雄勝硯、会津桐下駄、りんご剪定ばさみ、会津木綿、山葡萄細工、マタタビ細工、南部鉄器・・・
すさまじいほどの数、種類のものが、広いメイン展示室に並べてありました。そして、その横の部屋では、東北の人達が、雪が積もる中でそれらの食や道具を作る光景が、淡々とプロジェクターで映写されていました。
また、その横の通路には、これらの食や道具をつくる方の手を写した白黒写真が壁に並んでいました。
それらのものを目の当たりにして、僕は、写真を撮りたいという強い欲求に駆られました。
しかし、この展示会は、僕のその欲求をあざ笑うかのように、「写真撮影禁止」・・・。(まあ、普通、展示会は撮影禁止ですね・・・。)
残念無念と少しばかり落ち込んだのですが、ふと思いました。
これらの道具や食は、やっぱり、写真で撮って満足していいような代物ではない、と。
自分の中で、これらの食や道具を消え行く伝統・風俗として記録しておきたいという意識があったから、僕は写真を撮りたいと思ってしまったんではないかと。
これらの食や住は、「記録」する対象ではなく、今も現在進行形で在るもの。今も東北の地で、脈々とこれらの食や道具が、生産され、消費され、再生産されている。
こうした営み自体が続いていくことこそが第一義として大切で、こうした営みが、僕らの生活の傍らに残っていくような社会を作っていかなければ、と思ったわけです。
というわけで(?)、このブログに、展示物の写真を貼れませんので、是非「21_21 DESIGN SIGHT」に足を運んでもらいたいと思います。
あと、東北にも足を運んで、こうした素晴らしいものが作られ、使われている現場も訪問しようと思います。
それにしても、今回展示されていた加工品や道具、家具等の「完成度」がハンパなかったです。こういった用途、こういった料理には、このカタチ、この大きさでなくてはいけないという必然性がどのものからも、強く感じられました。
今巷に出回っているITデバイスやグッズのように、「今年の夏のはやりは〜」とか、「アップグレード版がいついつに出る予定〜」とか、そんな感じの刹那的な感じ、不安定な感じは一切感じさせない。
何百、何千年という暮らしの営みの中で、何度となく「アップグレード」してきて、「オンデマンド」してきて、いつの時点かに「完成」したのだと感じました。もちろん、今も多少の改善はされているのでしょうが。
また、作り手が使い手でもある。すべてのものが「ユーザー・オリエンテッド」(生活者起点)で作られている。
言葉を変えると、今流行のユーザー・イノベーションの究極の産物であると言えます。
現代に生きる我々の身の回りには、JISやらISOやらの標準規格や、グローバルスタンダードやら、製造者の都合で決まっていることが沢山あって、それらが当然のように、生活者に押し付けられています。そして、その結果、環境問題や貧困問題をはじめ様々な不都合なことが起きています。
そういうことを考えると、こうした「完成品」「ユーザーイノベーションの産物」を、時代遅れだと切って捨てる行為と言うのは、なんと大きな損失なんだろうか、と思いました。時計の針を逆回しに戻して、人間の知恵の積み重ねを捨て去って、ゼロから始めるような行為かもしれません。
もちろん一度便利さを知ってしまった僕らが全てにおいて昔ながらの暮らしを受け入れることは到底不可能であるけど、この叡智の結晶に、敬意の念を持って、もう一度教えを請うことは絶対的に必要だと思いました。
そんなことを考えさせられた展示会でした。
- 追記
デザイナーの佐藤卓氏、深澤直人氏のメッセージに共感です。
■佐藤 卓(さとう たく)/グラフィックデザイナー
「今、残っている素晴らしい手仕事を褒めたたえることは容易いが、どうしてこの地域に残ってきたのかを掘り下げ、そしてその精神をなんとか未来に残していく方法を探らなければならない時がきている。なぜなら、その永い間受け継がれてきた日本のものづくりの精神が、近代の合理主義により急速に消えつつあるからだ。この展覧会で、少しでも東北に残る日本のアノニマスなもの達に接していただき、日本のものづくりを今一度考えるきっかけにしていただければ幸いです」■深澤 直人(ふかさわ なおと)/プロダクトデザイナー
「自然と季節の力を借り、それも無駄のない一つの道具として授かり、日々の恵みとして蓄え続けて行く様。この停まることのない緩やかな循環が東北の人の生きるペースである。この生活には『テマヒマ』がかかっている。しかし穏やかで強く、迷いがない。このペースは自然と共生して来た長い経験によって、エコロジカル(生態的)な営みに同期し破綻がない。…東北には今、人が見失いかけている真の豊かさの定義と、飾らない美の真髄が潜んでいると確信している」
「テマヒマ展〈東北の食と住〉」へのメッセージと関連プログラム - 佐藤卓、深澤直人、奥村文絵、川上典李子など | ニュース - ファッションプレス
- 参考記事
21_21 DESIGN SIGHTで「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」 | ニュース | 美術館・博物館・イベント・展覧会 [インターネットミュージアム]
「テマヒマ展〈東北の食と住〉」へのメッセージと関連プログラム - 佐藤卓、深澤直人、奥村文絵、川上典李子など | ニュース - ファッションプレス
六本木の「テマヒマ展〈東北の食と住〉」は必見! : まるごと青森