森林・林業再生プランの真意は?
先週は、「准フォレスター育成研修」という林野庁主催の研修事業の予行演習として、高知に行きずっぱりだった。
その研修に向かう高知行きの飛行機の中で読んでいた、「現代林業」7月号(全林協)の巻頭特集で、この研修にも関わる「森林・林業再生プラン」が大きく取り上げられていた。
その中で、森林・林業再生プランの中核的な検討組織である森林・林業基本政策検討委員会の座長を務めておられた岩手大学農学部教授・岡田秀二さんのインタビュー記事が興味深かった。
森林・林業再生プランというと、この業界では結構懐疑的な意見を持っている人が少なくない。木材自給率や素材生産の生産性の目標数値ばかりが前面に出ていて、手段が目的化しているとか、また、提案型集約化施業、高性能林業機械の導入など、全国で画一的に進めていると言った意見である。
だけど、この岡田さんのインタビュー記事を読むと、どうやら、そうでもないらしい、ということが分かる。
「プラン」のあり方に大きな責任・影響を持っていた人(岡田教授)が考えていることは、森林・林業の関係者が持ちがちな「プラン像」とちょっと乖離があるなあ、ということだ。
もし、「プラン」がこういう哲学のもとに作られていて、そのような方向性で現場に落とし込まれていくのであれば、僕は全面的に支持したい。
(こういう趣旨が現場にしっかり伝わっていなかったり、うまく施策に落とし込まれていなかったりすることに対しては、改善が大ありだと思っているが。しかし、まあ、誰かに対して期待を丸投げしてもしょうがないので、関係する者の一人としてなにかしらの貢献はしないといけないと思っている。)
以下、僕が共感した岡田さんの発言箇所を、備忘録として抜粋しておきたい。
今回の再生プランの具体的なイメージで言えば、市町村森林整備計画を作るに当たり、地域で直接関わる人、さらに自治体のエリア枠を超えて関わりたい人など、地域の森林づくりの新しい共同の形、森林づくりのガバナンスを形成していくことに当たります。
個人も尊重するが故に今日的な形で「共同」の部分を作り替えるという発想が、これからの時代、非常に重要だと私は考えています。
従来の民有林の林政は蓄積を作るところに重点が置かれていたし、現在の政策体系は蓄積があることから始まるわけです。
しかし、今、その民有林を育ててきた森林所有者が後ろ向きになってしまっている。「山を持っていてもしょうがない」と。
こうした状況に対して、再生プランでは、農山村の新しい生活の基軸を作ってくれる資源として、もう一度きちんと個々の所有者が財産として所有林を見直してもらうことに関わってもらい、そして新しい持続的な山村づくりに繋げてもらうという論理を埋め込んでいるんです。
「再生プラン」で何が施策的に決定的に変わったかというと、「人工林」から「人工林+天然林または広葉樹林」へという広がりを「森林経営計画制度」で打ち出したことです。
まさに地域を主体に、例えば広葉樹林を大事にして、地域が計画性を持って、そこが新しい技術開発を含めてマーケットさえ拡大していく発想も必要だという考えも再生プランの中には込めているんです。
最終的に責任を持つ最も身近な自治体である市町村が、土地管理と生活管理を一体化させて責任の主体となるということは、地方分権、その先にある地方主権という時代の方向性に沿うことにもなるでしょう。
端的にはフォレスターということで象徴化していますが、市町村整備計画を作る際には、委員会みたいなものを作る。そのメンバーは、それに関わる人、専門家、そこに住んでいなくても協力したい人などもOKであると。それはまさに新しい共同という形態を作る作業です。
専門家が専門知識をただ押しつけるのではなくて、専門家であるが故に、皆の意見を聞いた上で、では森林の取り扱いをどうしたらよいかというときに実力を発揮してもらう。それがフォレスターの最も大事な機能だと私は考えています。
私自身は、地域ごとに違って良いと言っているんです。きちんと持続ある管理ができて、それなりの合理性と、効率性も追求しているという、そういう林業経営であれば、それはそれで良いんだと。
再生プランの表面に書いていることを大きく逸脱しないところで、地域バージョンが沢山出てくることを実は期待しています。もっと面白くしてほしいなと思います。
そうですね、面白くしましょう!!!