地域ぐるみでマーケティングする
1月21日、山村地域の自治体の職員さん約50名が集まる研修で2時間ほど時間を頂き、「地域づくりマーケティング」の講義&ワークショップを行った。場所は麹町の東京グリーンパレス。
「地域づくりマーケティング」というのは、私の勝手な造語で、企業の商品開発や事業戦略策定などでよく用いられるマーケティングのノウハウを、農山村地域の商品開発や地域戦略づくりに援用するもの。
5年ほど前から、長野県信濃町や上松町、浜松市、四国などで、試行錯誤を重ねてきて、ようやく成果も出始めてきて、方法論としてもカタチになってきたという実感を持てるようになったので、あちこちの研修や講演などで話させてもらっている。
詳細の方法論については、企業秘密もあるので(というのは大げさだけど!!)省くが、ざっと考え方だけ紹介する。
- 農山村でビジネスを行うために多くの場合で必要なことは、都市のニーズへの適合、地域の「強み・良さ」の発揮、(少ない資源を分散させる余裕はないので)選択と集中による一点突破。そう考えたときにマーケティングが有効になる。
- プロセス・フローは企業のマーケティングも、地域のマーケティングも基本的には同じ。SWOT分析やターゲティングやポジショニングと言った検討を行う。
- もちろん相違点もある。例えば、以下。
- 企業のマーケティングで活用する資源はその企業が持っているものに限られるが、地域のマーケティングでは、地域にある自然資源、文化資源、人材等を使いつくすことを考える。
- 企業でマーケティングするのは、主に経営陣・企画部門が多いが、地域のマーケティングでは、所属する組織も年齢も職業も異なる多様な主体が集まって、「地域ぐるみ」で行う。
- 企業のマーケティングは成功すれば会社の利益になるが、地域のマーケティングは成功すれば地域の活性化につながる。
- 「地域ぐるみ」でマーケティングを行うために、ワークショップ方式で話し合うのがいい。集まってもらうのは、(潜在的)事業参画者。
- 多くの場合、ヒト(人材)、モノ(資材、フィールド)、カネ(資金)、情報(情報発信力)といった事業推進に必要な資源をすべて持っている人・団体はいないので、「相補的な体制』を作ることが重要である。集まったメンバーが持っている資源を合わせるて、やっと事業に必要な資源が一通り揃う、くらいでいい。
- ちなみに、マーケティングと言っても色々な方法論を内包している。マス・マーケティング、ターゲット・マーケティング、リレーション・マーケティング等々。私は、顧客を獲得するまではターゲット・マーケティングの方法論を、顧客を獲得した後はリレーション・マーケティングの方法論を使うのがいいと考えている。
- ターゲット・マーケティングは、異なる市場や顧客に対して、それぞれ異なる製品、価格、プロモーションを投入すること。
- リレーション・マーケティングは、市場内の何人の顧客に買ってもらうかよりも、一人の顧客に何回買ってもらうか、を重要視する。長期的なパートナーシップを通して顧客のニーズを特定し、それを満たすようにカスタマイズされたサービスの開発、改善するという考え方。会員制クラブやSNSなどが参考になる。
- これからの農山村では、このリレーション・マーケティングの考え方が特に重要になってくると考えている。リレーション・マーケティングでは、「顧客進化」というキーワードがある。これは、顧客維持の努力を通じ、一般の顧客が「得意先」から「支持者」、「代弁者、擁護者」を経て、最終的には「パートナー」へと質的に進化を遂げることを目指すものである。
- 農山村の商品やサービスの顧客を、如何に普通のお客さんから、「得意先」から「支持者」、「代弁者、擁護者」、「パートナー」へと関係を深めていってもらえるかが、農山村における持続可能な地域づくりの鍵を握っている。
ざっと、こんな考え方である。
なお、今回の研修で特に私が参加者に強く伝えたかったことは、以下の二点。
- マーケティングは、「人任せ」にするのはよくない!「林野庁がこう言ってるから」とか、「大学の先生がこう言ってたから」とか、そんなこと言っていても失敗して責任をとるのは、自分たち。地域のみんなで考えよう。
- 日頃から「マーケティング思考」をしよう!常にアンテナを張ろう。新聞、テレビ、つり革広告、お客さん、友達、家族、飲み屋・・・。ニーズ情報はそこら中に転がっている。
これからも、色んな地域の人たちが、自分たちで社会の動向や都市のニーズを捉え、地域の資源を活かしていく取り組みを、「地域づくりマーケティング」をご紹介することで応援していきたいと思っているので、ご関心のある方は是非、お声かけください。