カンボジア・プレアビヒア寺院
先日カナダのケベックで開かれていたユネスコの世界遺産委員会で、カンボジアの「プレアビヒア寺院(Preah Vihear Temple)」を世界遺産リストに登録することが決定したそうだ。
アンコールワット寺院と同様ヒンズー教の寺院なのだけど、アンコールワットより古い遺跡らしい。
このニュースを1週間ほど前に新聞で読んだときは、へ〜くらいにしか思わなかったのだが、以下の記事を読んだとき、思わず「あっ」と声に出してしまった。
プレアビヒア寺院遺跡 カンボジア、タイ国境の絶壁の上に立つクメール様式の寺院遺跡。9世紀創建でアンコールワットより古い。タイ名・カオプラビーハン。両国が長く領有権を争い、1962年に国際司法裁判所がカンボジア領と決定。カンボジア内戦時はポル・ポト派の拠点になった。地形上タイ側からしか入れず、両国関係のあおりを受け、公開と閉鎖を繰り返している。
東京新聞:帰属争う世界遺産めぐり引責 タイ外相が辞意表明:国際(TOKYO Web)
「この遺跡、もしかして、トンチャイさんが言ってたあの遺跡のことか!?」
話は、10年ほど前にさかのぼる。
大学3回生の春、東南アジアを陸路でタイ→ラオス→ベトナム→カンボジア→タイと回る旅行の最初に立ち寄ったタイのバンコクで、昔からお世話になっているトンチャイさんの家に泊まったときのこと。
アンコールワットに行く予定だと、何気なくトンチャイさんに話したら、トンチャイさんが、少し興奮気味に話し始めた。
「カンボジアまで行かなくても、タイにも、アンコールワットより立派な遺跡があるよ。私の故郷のウボンラーチャターニ県の、東の端、カンボジアとの国境に近い丘の上に立ってるんだ。タイ人なら誰でも知っているよ。わざわざカンボジアまで行く必要はないよ。」と。
そして、その遺跡に行ったときの写真も見せてもらったが、びっくりした。まさに、ガイドブックに載っているアンコールワットと瓜二つの遺跡がその写真に写っていたのだ。
話は戻る。
その「ウボンラーチャターニ県の、東の端、カンボジアとの国境に近い丘の上に立ってる」とトンチャイさんが話してくれた遺跡こそ、今まさに世界遺産に登録された“カンボジアの”プレアビヒア寺院なのだ。
自分たちのモノだと思っていた遺跡をカンボジアに持っていかれた、タイ人の驚きと悔しさは、想像に余りある。
トンチャイさんの口調からも、アンコールワットに負けないだけの宝物を持っているんだという自負と誇りを感じた。
その誇りを根こそぎ持っていかれた悔しさが政府に向かい、タイの外務大臣の引責にまで発展しているのだろう。
察するに、カンボジア人も、自分たちのものだと信じて疑っていないのだろう。新聞によると、カンボジア政府は、遺跡へのタイ側からのアクセス路を封鎖してしまったようだ。
タイとカンボジアは、10世紀ごろから侵略したりされたりという歴史を繰り返してきたわけなので、今回の問題は簡単には解決しないだろう。外務大臣の引責で問題が収束するようにも思えない(紛争に発展しなければいいなあ・・・)。
「世界遺産」というのは、世界市民“共有”の財産というのはきれい事でしかないというのは理解しつつも、ここは敢えて提言したい。
このプレアビヒア寺院を、カンボジアとタイの友好の証として、両国共有の財産としてはどうか。
プレヒビア寺院の敷地内を、事実上の「停戦ライン」ならぬ「友好エリア」と設定し、両国が共同で管理し、どちらの国からも、パスポートなしでアクセスできるようにするのだ。
いかがでしょうか。