日本再発見ノート Rediscover Japan. 

株式会社さとゆめ・嶋田俊平の日々の思い、出会い、発見

地域に真に貢献しえる林業・木材産業のあり方とは

今年度、四国経済産業局からの委託を受けて調査研究に取り組んできた成果が、四国経済産業局のHPにアップされましたので、お知らせします。

四国経済産業局では、地域の農林漁業と商業・工業等の農商工連携を図る取組みの一環として、今年度、有識者による「四国地域森林資源有効活用モデル研究会」を設置し、四国内外の先進地域のヒアリング調査結果等も踏まえて、四国を元気にする森林ビジネスのあり方に関する検討を行って参りました。
 この度、その調査報告書、マニュアル「四国発!高付加価値型森林ビジネスの手引き」を取りまとめましたので、ご紹介します。現場の林業・木材加工関係事業者、地方自治体等の皆様に、今後の林業及び木質バイオマスエネルギーの利活用等関連産業の振興に向けた取組みの一助として、ご活用いただければ幸いです。
平成22年度地域経済産業活性化対策調査事業

この事業では、四国の森林、林業、木材産業の有識者や現場のリーダー達による研究会を立ち上げ、地域に真に貢献しえる林業・木材産業のあり方について議論が成されてきました。具体的には、以下のようなスタンスに基づいた議論です。簡単に言えば、「量より質」「小さくてもキラリと光るビジネスモデル」と言えるでしょうか。

●地域に雇用を生み出す森林ビジネスの創出を目標に設定
まず、四国内外の先進地域を調査することで、「森林ビジネス」の成功ポイントを探りました。しかし、一言で「成功」と言っても、できるだけ多くの森林を整備することを「成功」と見なす、個々の事業体の売り上げを増加させることを「成功」と見なす、地域全体の雇用を増やすことを「成功」と見なす等、色々な考え方があります。
本研究会では、できるだけ多くの雇用を生み出す森林ビジネスこそ今地域で必要とされていると考え、単に森林保全だけを目標とする事業や特定の企業のみが儲かるビジネスではなく、森林資源を総合的に利活用し、地域の雇用創出に貢献し得る森林ビジネスのあり方について議論してきました。

●スケールメリットよりも、スコープメリットの発揮に重点
木材の生産・流通の課題を解決するための方策を大きく二つに分けるとすると、スケールメリット(規模の統合による効率化の追求)による解決と、スコープメリット(川上・川下の垂直連携による効率化の追求)による解決に分けられます。本研究会では、小規模であっても、商品・サービスのブランド化、需要と供給を的確につなぐための生産者(川上・川中)と消費者(川下)との関係づくり等、スコープメリットの発揮により地域の総合的な利益を高めるビジネスモデル、小さくてもキラリと光るビジネスモデル、の創出に重点を置いた検討を行いました。

●「高付加価値型」がキーワード
そして、この研究会での議論の中で出てきた、四国を元気にする森林ビジネスのキーワードが「高付加価値化」です。
詳細については次ページ以降で述べますが、従来のように丸太を単に地域外に出すだけでは、利益が地域外に流出してしまい地域は豊かになれません。できるだけ地域内で加工し、付加価値を高め、仕事を増やす。そして、様々な主体が共存を図ることが森林を核にした産業振興を実現するためのポイントであると考えました。
「四国発!高付加価値型森林ビジネスの手引き」

そのスタンスのもと行った調査や議論の結果が、報告書と、「手引き」にまとまっています。沢山の議論や四国内外の地域事例から、以下に示す9つのポイントが特に重要なのではないかと考えられました。

ポイント1 地域内での木材・木製品の加工度を高める
ポイント2 量を絞ってでも品質の良いものを作る
ポイント3 相対取引により顧客ニーズにきめ細かく対応する
ポイント4 多様な主体が連動して事業を推進する
ポイント5 都市部に事業パートナーを確保する
ポイント6 顧客と顔の見える、長期的な関係を作る
ポイント7 家づくりや森づくりのストーリーを顧客と共有する
ポイント8 森林認証等により、ストーリーを確固たるものにする
ポイント9 事業で得た利益を地域内で循環させる

詳しくは、こちら→ 「四国発!高付加価値型森林ビジネスの手引き」調査報告書(概要)

なお、この事業の中で、委託先として四国内の9地域、四国外の4地域を訪問調査させて頂きました。四国外の地域は、宮崎県諸塚村、長野県根羽村、岩手県住田町、岩手県釜石市です。

各地域の調査結果は、「調査報告書」のP33以降に詳細がありますので、是非ご覧ください。
「四国地域における森林資源を有効活用した地域産業振興モデル」調査報告書

ただ、岩手県住田町、釜石市は、このたびの東北地方太平洋沖地震で、大きな被害を受けたことをニュース等でも見聞きし、胸を痛めています。お世話になった方のご無事と、一日も早い地域の復興を願うばかりです。