ぼくは猟師になった
友人のスズオから紹介してもらった本。
- 作者: 千松信也
- 出版社/メーカー: リトル・モア
- 発売日: 2008/09/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者である千松信也さんは京都に住む33歳の猟師。今年で8年目の猟期を迎える。獲物の行動を読み、ワナ(ククリワナ)や網(無双網)をしかけ、捕らえ、さばき、食べる。かつてわたしたちも、こんな動物との挑みあいから食べ物を得ていたのかもしれない。
現代を生きる猟師の一年間の生活に密着できるエッセイ。
おすすめです。
著者はこの本を著した動機を、「実際の狩猟、猟師の生活をひとりでも多くの人に知ってもらえたら、と前々から思っていたことも本書の執筆の動機でした。」と書いていますが、狩猟の導入本、ノウハウ本としてだけでなく、いろんな読み方ができる本だと思います。
私は、この本を、働き方、暮らし方の本、さらにはアイデンティティとは何かを問う本として読みました。
著者は、京大在学中からワナ猟を学び、現在は運送会社で働きながら、狩猟にいそしむ毎日です。しかし、彼は、肉は捕ったイノシシやシカの肉を食べていますが、狩猟で「食べている」(現金収入を得ている)わけではありません。
でも、彼は自分は猟師であると、迷いなく言い切ります。
はっとしました。
アイデンティティとは、必ずしも(現金収入を得る手段としての)「職業」と結びつくわけではありません。そうは思いつつ、そういった思考回路になりつつある自分を反省しました。
ワークライフバランスなんて言葉が最近流行っていますが、ワークとライフのバランスをとるのは次善の策であって、ワークとライフが一体化していることが究極の理想だと思います。
彼はそれを実現しつつあります。
現金収入を得る場である運送会社に狩猟の師と狩猟仲間がいて、出勤前と会社帰りにワナの見回りをする。(出勤前にイノシシがワナにかかっていた時なんかは、「イノシシ下ろしてるんで、十分くらい遅刻します。すみません!」と電話したりも。)
とにかく、この本は狩猟に関心のない人にも読んでもらいたい本です。
(著者のブログも面白いです。ただし、刺激的な写真も満載なのでご注意ください。)
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今、愛媛に来ていますが、地元の人と話すと、どうしても「坂の上の雲」の主人公、正岡子規・秋山兄弟を思い出してしまいます。穏やかで、ひょうきんな、それでいて野心もある、そんな県民性は今も生きていると思います。
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