日本再発見ノート Rediscover Japan. 

株式会社さとゆめ・嶋田俊平の日々の思い、出会い、発見

「希望」とは

希望学 (中公新書ラクレ)

希望学 (中公新書ラクレ)

一昨日は、とあるワークショップの仕事で、東京大学の白石先生(森林経理学がご専門で、森林認証に深く関わる)と、玄田先生(社会科学研究所の希望学プロジェクトのリーダー)に講演をして頂きました。

白石先生には「森林・林業における持続可能性指標」について、玄田先生には「希望」について。

玄田先生は経済学が専門で、普段馴染みのない類の話だったのですが、とても面白かったです。

1990年代以降「希望喪失」とか「希望格差」が世間で言われるようになったり、オバマが演説でHOPEを繰り返したり、「希望」が今の社会のキーワードになっていますが、「希望って何?」ということは考えたことがありませんでした。

が、農山村や地方都市での仕事へのヒントを頂いたような気がします。

以下、幾つかぐっと来た点をメモ。

  • 希望は、「豊かさ」と「社会的なつながり(人間関係)」、「物語性」が源泉になっている。
  • 宇多田ヒカルがマネージャーに「絶望の反対はなんだと思う?」と聞いて「希望ではないか」とマネージャーが答えたら、「ちがう。絶望の反対はユーモアだ」と言った。「希望」の本質を突いている。
  • 新明解国語辞典の「ユーモア」の項には、「社会生活・人間関係における不要な緊張を和らげるのに役立つ、えんきょく表現によるおかしみ」とある。今、社会生活・人間関係は「不要な緊張」にあふれているが、それを和らげる「えんきょく表現」、「おかしみ」が足りないかもしれない。
  • 若者は、将来が心配になるようなことばかり言われて育っている。「大丈夫だ」と言われて育っていない。そして、「不要な緊張」ばかり高まってしまっているのではないか。
  • 「大丈夫だ」と言ってあげることが大切なのではないか。もちろんいい加減なことは言えないが、どこかで「大丈夫だ」ということがないとしんどくなってしまう。
  • 「こうすれば大丈夫だ」という知恵や経験を具体的に積み上げていき、挫折に遭遇し乗り越えるという「小さな物語」を着実に作っていくことが、地域や職場でもとても重要ではないか。
  • 希望と時間軸は密接に関わっている。かつては、希望は「向こう」にあった。将来新しい家に住みたい、車が欲しいと言ったように。しかし、現代では、向こうにあった希望が近づいてきて、「今気持ちよくなりたい」「今欲しい」「今癒されたい」という人が増えている。遠くにあり、今は手元にないものに思い憧れて待ち続けるということが出来にくくなっている。グローバル化、IT化により、社会の時間軸が短くなってきたことが、希望を持ちにくくなってきたことと密接な関係にあるだろう。
  • 社会や地域に対して誇りを持っていることと、個人的に何らかの希望を有していることは密接な関係にある。自分の将来に希望を持っていることと、そんな自分を育んでくれた地域に対する感謝の気持ちとは表裏一体である。

希望学 (中公新書ラクレ)

希望学 (中公新書ラクレ)