日本再発見ノート Rediscover Japan. 

株式会社さとゆめ・嶋田俊平の日々の思い、出会い、発見

柏の葉

昼から茨城県つくば市へ。

つくばまでは、家から自転車で10分もかからない「柏の葉キャンパス駅」から、新しく開通したTX(つくばエクスプレス)に乗って20分で行けてしまう。いやはや便利。

柏の葉キャンパス駅があるところは、昔は田んぼが広がっているようなところだったが、今では、高層マンションの建設ラッシュのまっただなか。三井不動産のマンションだけで、A棟からE棟までの5棟が建設中で、その横で清水建設も建てている。

こんなに建てて売れなかったらどうするんだと勝手に心配していたが、建築関係の仕事をしている友人の話では、飛ぶように売れているらしい。

行きがけ、駅の壁に掛かっていたポスターに書かれた、マンションのキャッチコピーに目が行った。

自然のやさしさと、都会の洗練を同時に求める。街は、人のわがままをどこまで満たせるのだろう。

これはうまいコピーだ。このコピーにクラッときて、マンションを買った人も少なくないだろう。

一方で、「う〜ん。なんかな〜。」という釈然としない思いを抱きつつ、TXに乗り込み、つくばへ。

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つくば市では国立環境研究所にて、住環境・交通と持続可能性をテーマにしたワークショップに運営者側で参加。目から鱗が落ちるような話を沢山聞くことができた。

タイミング良くも(?)、「柏の葉」という、今まさに、新しい「住環境」と「交通」が外から突如ポンと持ってこられ、そのまわりに突貫工事で新しい街がつくられようとしているところを目の当たりにしてきたばかりなので、頭のなかでは、もっぱら「柏の葉は、持続可能か」という地元ローカルなことばかりぐるぐる回っていた。

話の中で、はっとした指摘は、

  • 持続可能性が、安全性や快適性、利便性、保健性といった従来の指標と根本的に異なるのは、持続可能性は、住民の能動的な姿勢が不可欠であるということ。
  • 安全性、利便性などは不動産価値に直接反映されるが、持続可能性は、直接的・短期的には不動産価値に反映されない。
  • 住民が継続的な努力によって作る価値である。

ということ。

これを聞いて、自分がマンションのコピーをみて釈然としなかった理由が分かった。

自然のやさしさと、都会の洗練を同時に求める。街は、人のわがままをどこまで満たせるのだろう。

ここでは、「人」はあくまでも受動的である。サービスを受け、「わがままを満たす」側だ。もちろん、「わがままを満たしてあげる」ことこそが、不動産価値を高めるということなのだから、このコピー自体にいちゃもんをつける気は毛頭ない。

しかし、「自然のやさしさ」、「都会の洗練」を維持しつづけるためには、「わがままを押さえる」ことも必要なのではないか。そう思っただけだ。

そういう局面が出てきたとき、住民は、どのような行動を取るのか。私は、そこに興味がある。

自然を食いつぶしておさらば?
古くさくなって都会の洗練が失われたらバイバイ?

と、他人事にあれこれ言ってしまったが、決して悲観しているわけじゃない。

この「柏の葉」に対する愛着が芽生え、住み続けたいという思いが生まれれば、きっと多少の我慢もしつつ「自然のやさしさ」と「都市の洗練」を維持する努力を始めるだろうと思うし。

20年後、30年後、この「柏の葉」をまた見てみたいなあと思った。