青べか物語
- 作者: 山本周五郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1963/08/12
- メディア: 文庫
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山本周五郎の代表的な小説「青べか物語」の舞台は、江戸川の河口のほとりにある貝と海苔を細々と営む小さな漁村、浦粕部落である。
最近、その浦粕は、かつての浦安がモデルになっていたことを知った。
東京都と千葉県の境を流れる江戸川の河口に、貝と海苔と釣場で有名な浦粕部落がある。ある日、「先生」と呼ばれる三文文士がやってきたが、プリプリ張り切った若い女の肢態に眼をうばわれ、当分の居を増さんの家の二階にきめた。楽しい刺戟の中でケッサクをものそうというわけだ。先生は見知らぬ老人から、青べか舟を売りつけられた・・・
あらすじ-青べか物語
今は、べか舟(一人乗りの木造船)ならぬモノレールが空中を走り、漁師宿ならぬお城(シンデレラ城)が高々とそびえる、あの浦安が浦粕だったとは・・・
山本周五郎は大学に入った頃によく読んで、その中でも「青べか物語」は頭に浦粕の様子を頭に描けるくらい印象に残っていたので、今の浦安とのギャップに驚くしかない。
が、先週の日経新聞の文化面に、「青べか物語」に因んだ話が載っていて、頭(と心)の整理が出来た。
いくつかメモ。
- ベカの語源については諸説があるが、船底が薄く、ベカベカと音を立てるという説あり。
- 海苔採り専用のべかはノリベカといい、長さ15尺、幅3尺ほど。貝を採る腰巻き漁にも使うベカは、ノリベカより一回り大きい。
- 戦後、浦安では腰巻き兼用のベカが主流だった。
- 1971年、浦安では漁業権を全面放棄し、べか舟も姿を消した。
が、90年代から郷土見直しの機運が高まり、べか舟を復元する「浦安舟大工技術保存会」や、伝統漁法を後世に伝えるために「浦安細川流投網保存会」などが結成され、活発に活動されているそうだ。(ここで、べか舟は郷土のシンボルになっている模様。)
海は埋め立てられても、「郷土」は埋め立てられなかった。
そして、「郷土の記憶装置」としての文学。