日本再発見ノート Rediscover Japan. 

株式会社さとゆめ・嶋田俊平の日々の思い、出会い、発見

英国の持続可能な地域づくり

英国の持続可能な地域づくり―パートナーシップとローカリゼーション

英国の持続可能な地域づくり―パートナーシップとローカリゼーション

4年程前の本だが、最近著者の中島さんと仕事をすることになったので、(あわてて)読んだ。

「持続可能な地域づくり」*1というのは、国・自治体レベルで大きい課題となっているが、実際何をどうしたらよいものか、現場の人が困惑しているのを良くみる。

省エネも、自然エネルギー利用も、ごみの3R(リサイクル・リユース・リデュース)も、環境教育も、自然保全も、森林管理も・・・しなければいけないことが多すぎて、結局何も手につかない、といった具合。

が、著者の主張は、とても簡潔だ。

英国の経験を参考に、今後の日本の持続可能な地域づくりの展開に必要なものは何か。
それは、「パートナーシップ」と「ローカリゼーション」であろう。

2年間のオックスフォード留学中に、イギリスの過去30年間の地域再生の試行錯誤の事例を綿密にスタディーした結果、ここに行き着いたという。

かく言う私も「持続可能な地域づくり」について頭の整理がまだ出来ていない状態だったので、こうもスパッと言い切られてしまい、正直少したじろいだ。

が、自分の少ない経験から、「あ、確かにそれが肝だろうな」という感覚もある。

思い返せば、杉良でも、薪く炭くでも、薪炭キャンペーンでも、今やっている仕事でも、どうやって多様な立場・職業の人々の意思を尊重しつつ一つのことを成すか(パートナーシップ)、どうやって地域に埋もれた資源を活かすか(ローカリゼーション)ということばかり考えていた/いるような気もする。読み終わって、少し安心した。方向性は間違っていなかったかもしれない。

なお、著者の言う「ローカリゼーション」「パートナーシップ」について、もう少し引用を加えてみたい。

地域の資源、人、金を掘り起こし、地域の中で最大限に活用していくことは、そこに関わる人の持続的な活動エネルギーを盛りたて、活動に必要な資金を持続的に補給していく。そして、活動に必要な資源も環境への負荷が少ない形で持続的に供給される。つまり、地域内の資源を循環することを通じて、持続的な地域再生が可能となる。
このような地域内循環の実現のためには、ものやサービス、知恵を生産・提供する人、それを使う人など多様な主体のパートナーシップが必要不可欠である。

なお、ローカリゼーションには、少し注意が必要。

(ローカリゼーションによる)地域内資源循環型社会とは、他の地域とは交流のない閉鎖的なコミュニティを作ろうとするものではない。むしろ、持続可能性を実現する知恵や技術は、地域、国境を越えて広がることが望ましい。

ここで言うローカリゼーションは、ローカルな資源を活用しようということであって、知恵や技術は他地域・他国からグローバルなレベル・質のものを貪欲に吸収しなければならない。

また、パートナーシップについても、注意が必要。

「パートナーシップ」のために必要な要素は、「時間」と「体感」であると考える。「時間」とは、試行錯誤と合意形成のために時間をかけることへの許容である。

パートナーシップは一朝一夕で出来るものではない。

ブレア政権が始めた地域再生施策「コミュニティ・ニューディール」は、地方からのボトムアップの提案に基づく資金支援制度だが、10年間という事業期間を設定している。

これはまさに「協働のための「時間」感覚を政策的に取り入れた」ものである。さらには、その取り組みを「社会実験」として位置づけ、成果の他地域への波及と政策の見直しを進めている。

日本の地域再生施策というと、大抵が年度毎、長くても3年が単位になっている。日本でも「パートナーシップ」は陳腐なまでに言われているが、パートナーシップの醸成にかかる時間を「許容」する態度についてはイギリスを見習う必要があるだろう。

何十という事例スタディーに基づく盛り沢山の内容の本なので、まだ充分に読みこめていないが、まずは一通り読み終わっての感想。

*1:簡単に言うと、あなたが愛する地域が子供な孫の世代でも、今と変わらず、あるいは今以上に魅力と活気にあふれ、人々が幸せに暮らし続けることができるようにすること