日本再発見ノート Rediscover Japan. 

株式会社さとゆめ・嶋田俊平の日々の思い、出会い、発見

八木重吉

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東葛飾高校にある八木重吉の詩碑。(「欣也の柏探訪」より拝借)】

今日友人の中西さん、相馬さんと飲んでいたのだが、相馬さんの口から八木重吉の名前が出た。

相馬さんはプロの作曲家で、中学校の合唱部の指導もしているのだが、コンクール出場用に、八木重吉の詩「うつくしいもの」に曲をつけたのだそうだ。

「曲を決めるときに色んな詩人の詩を何千と読んだけど、どれも難しかったり、ネガティブだったりして、中学生に歌わせたいものってなかなかなかった。だけど、この八木重吉の詩は、明快でまっすぐで、それでいてミステリアスなほど深くて。これだ、と思った。」

「うつくしいもの」

わたしみづからのなかでもいい
わたしの外の せかいでも いい
どこにか 「ほんとうに 美しいもの」は ないのか
それが 敵であつても かまわない
及びがたくても よい
ただ 在るといふことが 分りさへすれば、
ああ ひさしくも これを追ふにつかれたこころ

八木重吉「秋の瞳」(大正14)所収】

八木重吉は、私の母校・千葉県立東葛飾高校で教鞭をとっていた詩人。

八木重吉の名前を聞いて、すぐに高校のグランドの片隅にあった詩碑を思い出した。

「原っぱ」という詩が彫られていた。

「原っぱ」

ずいぶん
ひろい原っぱだ
いっぽんのみちを
むしょうに
あるいてゆくと
こころが
うつくしくなって
ひとりごとをいうのが
うれしくなる
八木重吉「秋の瞳」(大正14)所収】

高校生のときは「こんな幼稚な詩を書いて詩人を名乗るなんて」などと思っていたけど、今、八木重吉(享年29歳)より長い月日をまがりなりにも生きてきて、その詩の深さにようやく気付く。

秋の瞳 (愛蔵版詩集シリーズ)

秋の瞳 (愛蔵版詩集シリーズ)