味の極上地
昨日の日経新聞コラムから抜粋。
フランスでは「味の極上地」(SRG)制度を設けている。
政府五省の代表で校正する専門委員会の協力を得て、地域の特産品ジャンル別に全国九十六地域を味の極上地として選定している。地域の特産品と伝統文化にこだわり、生産者と消費者の結びつきを強め、地域振興と観光振興の両立を図っている。特産品開発では日本にも地域ブランド戦略があるが、欧州の事例とは決定的な違いがある。日本では大消費地への量的拡大志向が顕著。それに対して欧州では、旬の食材や各地域のブランド酒、菓子類を近辺から集めて集荷市場を形成し、観光振興と連携させて地域活性化を生み出している。つまり特産品は地域外に出さず、そこを訪れないと味わえない仕組みを構築している。
2008年8月22日付け日本経済新聞(朝刊) ゼミナール「観光立国への挑戦 24」
「特産品は地域外に出さず、そこを訪れないと味わえない仕組み」。確かに日本ではそういった意識は薄いかもしれない。
2年前に経産省・農水省が導入した地域ブランド(地域団体商標)制度も、「地域名+商品(役務)名」からなる商標*1であって、フランスの「味の極上地」のように、「極上の食を有する地域」自体を認定するものではない。
モノを認定するのか、地域を認定するのか。このことは、よくよく考えると大きな違いである。
モノは、そのモノが生まれた地域から、そのモノを作ったヒトから離れれば離れるほど、物語性(ストーリー)を失ってしまう。村のおばあちゃんが、そのまたおばあちゃんから教わった秘伝の製法で作った佃煮も、トラックで高速道路を運ばれ、大都市のデパ地下の「特産品コーナー」に他の地域の産品と一緒に並べられた時には、すでに、何の物語も持たないタダの佃煮として値踏みされているかもしれない。(それが例え、経産省・農水省にお墨付きをもらっている「地域ブランド」認定を受けていたとしても。)
たぶん、これが全国のデパ地下や、駅構内の仮設特産品コーナーの現実。
特産品開発を考えるとき、どうしても、どうやって「売り出すか」という方向で戦略を考えてしまいがち。でも、本当は「食べに来て」もらえたら、それに越したことはないのだ。
目指すべきところは「食べに来てもらう」こと。ハードルは高いと思う。ただ、それを常に意識することは重要だと思う。