日本再発見ノート Rediscover Japan. 

株式会社さとゆめ・嶋田俊平の日々の思い、出会い、発見

信州信濃町とブランド・エクイティ・モデル


先週の水曜日、信州信濃町主催「癒しの森サロン」が、東京グリーンパレス(千代田区平河町)で開催され、60人以上の参加で盛況でした。

信濃町の皆さま、本当にお疲れさまでした。素晴らしい宴でした。

このサロンは、昨年6月の住民ワークショップで立ち上がった二つのプロジェクトのうちの一つ。もう一つは既に始まっている人材育成事業「癒しの森コンシェルジュ」ですので、半年ちょっとで二つとも実現。いやはや、改めて信濃町は実行力がすごいですね。

<参考>
ワークショップと黒姫登山 - 日本再発見ノート Rediscover Japan.
癒しの森コンシェルジュ育成講座 - 日本再発見ノート Rediscover Japan.

今回のイベントの趣旨は、農山村を介して都会企業に横のつながりをつくっていくこと。地域と企業の関係だけでなく、協定企業同士の関係を深め、新たな持続可能な地域経営&持続可能な企業経営のムーブメントを生み出していくことです。

このことについて、法政大学の中嶋聞多先生が閉会のご挨拶でされたお話がとても分かりやすかったので、メモしておきたいと思います。(私の解釈も加えてのメモなので、あしからず。)

企業や地域のブランド論をご専門にされている中嶋先生は、ブランド論の観点から、この「癒しの森サロン」の意義についてお話をされました。

企業のブランド論においては、強固なブランドを構築するための手法として、近年「顧客ベースのブランド・エクイティ・モデル」(アメリカの経営学者であるケビン・レーン・ケラーが提唱)が用いられることが増えているそうです。

ブランドそのものは、企業が意思を持って向上を図っていくものですが、ブランド・エクイティブランディングの結果として、企業が得る資産価値)は企業の意思だけで作り上げられるのではなく、企業のさまざまなマーケティング努力を消費者や顧客がどのように受け止めるかで決まってくると言われています。

ケラーは、このブランド・エクイティを高めるためには次の4つの段階を踏む必要があると論じています。

まず、消費者がその企業や商品の存在を知るという「認知」の段階。次に、企業や商品の存在を知った顧客に、その企業や商品がどのようなものか知ってもらう「連想」の段階です。

こうした段階を踏んではじめて、その商品を購買する、企業の顧客になるという行動である「反応」が起きます。さらに、企業と顧客がコミュニケーションを深めることで、顧客の企業や商品への信頼を深め、さらには顧客間のコミュニティ形成が図られる「関係」の段階へと進むことができる、という考え方です。

信濃町の癒しの森事業にこの「顧客ベースのブランド・エクイティ・モデル」を当てはめると(「信濃町」「癒しの森」というブランドを強固にして地域活性化を目指すシナリオに置いて)、どの段階にあると言えるでしょうか。

信濃町では10年近くも前から人材育成、宿のサービス向上に取り組み、「癒しの森」の商標登録の取得、企業への営業、メディアへの情報発信、主催イベント開催など、地道にブランディングに取り組んできました。つまり、「認知」→「連想」の段階をじっくりと上がってきたと言えます。

そして、企業へのねばり強い営業により、18社の企業(今回のサロンで新たに2社と公開調印し、18社になりました)と「企業のふるさとづくり協定」等の協定を結ぶことにつながり、まさに「反応」の段階に入ってきたと言えます。そうです、次は「関係」の段階へとステップアップすることが必要とされていると言えます。

なお、このモデルでは、「関係」を深めるためには「共鳴性」を有することが必要であるとされていますが、この「癒しの森サロン」こそが顧客間(つまり、協定企業間)に「共鳴性」を生み出すものである、と言えるわけです。

実際に、今回のサロンから、協定企業さんの共同出資での信濃町行きバスツアーや、信濃町でのイベントの共同協賛など、まさに「共鳴」が起こり始めています。

と、言うような少し堅い話は別としても、私も含め、参加者の皆さんとても楽しまれたのではないでしょうか(これが一番大切なことですね!!)。

↓の写真は信濃町の方が遠路はるばるもってきてくださった郷土食。小板橋のおばちゃんが朝早くから作ってくださった「ご汁」、お餅、がんも、お豆腐等々どれも美味しかったです。




↓の写真は、今回のサロンで公開調印式に臨まれた協定を結ばれた、NECネクサソリューションズ労働組合さんとマーキュリープロジェクトオフィス株式会社さん。どんな協働プロジェクトがうまれるのか楽しみにしています。

次回は会場を信濃町に移して開催予定とのこと。今後、ますます企業間、そして企業と地域の「共鳴」が広がっていくことを祈っています。

戦略的ブランド・マネジメント 第3版

戦略的ブランド・マネジメント 第3版