読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

日本再発見ノート Rediscover Japan. 

株式会社さとゆめ・嶋田俊平の日々の思い、出会い、発見

アリとキリギリス

今年は、「目指すべき社会像」について、突詰めて考える年にしたい。

循環型社会、持続可能社会、低炭素社会、脱温暖化社会・・・

妙にかっこよくて、使い勝手も良い、ベンリな言葉が溢れている。

自分も含めてみんな、そのベンリな言葉を使うことで、分かったフリをしていることはないか。思考停止状態になっていないか。

循環型社会?モノが回ってたらそれでいいってのか?
持続可能型社会?続くことを目標にしないといけない社会なんて、つまらないと思わないか?
低炭素社会?目に見えないCO2に縛られて生きるなんてまっぴらだ。
脱温暖化社会?温暖化社会から脱出して、どんな社会を作るのか、それこそが大切なんじゃないか?

その先を。その奥を。もっと、根源まで考えないとダメだ! と自分に言い聞かせる。

まだ考えが固まっているわけではないけど、昨年の仕事で関わったとあるワークショップで参加者と作った「シナリオ」は、目指すべき社会像を考えるヒントになるような気がしている。

参加者が6つの班に分かれ、それぞれの班で近未来の「物質フロー」とそれを管理するシステムがどうなるのかというシナリオを作ったのだけど、そのなかの一つがこれ。(報告書より転載)

この班の参加者は、これからの社会の行く末を、イナゴ、キリギリス、ハチ、アリの四つのシナリオに分けた。以下報告書から抜粋。

◆第3象限:イナゴシナリオ
・資源を食い尽くして最後は自滅するというイメージ。市民の熟度が低く野放しに近い状態で、また温暖化対策も全く進んでいないため、化石燃料や天然資源を大量消費する状態が続く。一方で、廃棄物排出量は増加し、不法投棄も増える。
・管理システムについては、経済優先の仕組みで経済界の言い分が基本的に通り、規制が緩和されるため、一層大量消費の方向にいきやすい。

◆第2象限:キリギリスシナリオ
・「イナゴ」よりも市民の熟度が上がり情報伝達技術をうまく使うことができる場合、発信者も受信者も情報を正確に認識した上で、広域的にアイデアを交換するようになる。
・個人の環境意識は高いが、温暖化対策は進んでいないため、社会全体としては経済優先で進む。グリーン購入等は行われるが、その影響力が高まっていない状態。
・最低限の法は順守するが、さらに強化する方向には進まない。市民間のネットワークは出来てきているため内部告発のようなものは起こりやすいが、システムを改善するところまで活かせていけない。
・今が楽しければいい、刹那的な生き方をしているようなイメージ。

◆第4象限:ハチシナリオ
・温暖化対策が進み、例えば非常に高い二酸化炭素排出量の削減目標が決められて、それを各国で何とかしようという状況。
・基本的には政府による管理統制社会で、それに反発して時々暴走することもある。管理されているため、つまらない社会というイメージ。
・情報や廃棄物資源に対して国家による徹底した管理が行われ、強制的に3Rを進める制度や、製品やサービスについて非常に厳しい規制が作られる。

◆第1象限:アリシナリオ
・自律的に協調して生きていく社会である。
・マテリアルフローとしては、強制的・規制的にというより自発的に3Rが進む。
・製品やサービスについて、市場としては多様だが、熟度の高い消費者に選ばれた結果、良い方向に進む。
・温暖化対策についての高い目標を、マナーとモラルで自律的に達成していくイメージ。

さらに、こんな考察も加えられている。

■現状からあるべき姿へ
・「アリシナリオ」が理想だが、現状は「イナゴ」と「キリギリス」の間、「イナゴ」寄りにあると思う。理想の社会に行くためには、「イナゴ」から直接「アリ」に移行するのではなく、「キリギリス」を経由して回っていくと考えた。
・まずは、環境教育、モラル教育、マスコミの教育も含めて、市民の熟度や環境意識が向上する。次にNPOの財政基盤を整備するような制度が進み、こういった活動をする人たちの力がつく。さらには、労働時間の短縮を進め、仕事に追われるのではなく地域に関わることの出来る時間や余裕を作っていく。企業のCSRも進む。市民の意識の向上によってシステムが引っ張られるイメージ。
・そのようなものを経ないと、温暖化対策が進み、かつ管理統制型ではない「アリ」社会にはならないのではないか。

このシナリオの一番のミソは、「市民の成熟度」を軸に置いたところだろう。

今の世の中の環境関係の論調を見ていて思うのは、どうも「ハチ」社会に向かっているのではないかというのが私の感覚だが、このシナリオは、そんな社会の動きに対して異を唱えていると言っても良いだろう。

どんなに法律や制度で縛っても、市民が成熟していなければ、あるとき市民が「暴走」してしまうこともあるし、何より上から電気消せだとか、空き缶リサイクルしろだとか指示される社会(「ハチ」社会)なんて「つまらない」。「つまらない」ことはきっと「持続」しない。

たとえ「キリギリス」を経由するにしても「アリ」を目指そう。人から規制、指図されるのではなく、自分の意志で取り組もうよ。それこそが、本当の意味の「持続可能型社会」を実現する唯一の道なのだと。

「市民の成熟度」。これがキーワード。これまでNPOに関わってきた身として、このシナリオを勝手に自分の応援に替えてもいる。市民活動に取り組んできて間違いはなかった、と。



拝啓 ハチ様

貴殿が「つまらない」と、決めつけているわけではありません。あくまでも、人間の勝手な例えです。

ですので、怒らないでください。刺さないでください。

あしからず。