日本再発見ノート Rediscover Japan. 

株式会社さとゆめ・嶋田俊平の日々の思い、出会い、発見

定住自立圏構想

有識者で構成される総務省の「定住自立圏構想研究会」が、5月15日に最終報告書を発表した。

総務省|定住自立圏構想研究会|定住自立圏構想研究会報告書

 「定住自立圏構想」は、福田康夫首相が1月の施政方針演説で「地方都市と周辺地域を含む圏域ごとに、生活に必要な機能を確保し、人口の流出を食い止める」と表明し、検討が進められてきた。

 これまでの地方自治は一つの自治体が病院、学校、文化施設などを完備するのが基本。これに対し報告書は、「すべての市町村にフルセットの生活機能を整備することは困難」と指摘し、総合病院や高等教育機関を中心市に集約し、周辺市町村は人材や資金を提供しつつ、中心市の機能を利用する方向性を打ち出した。
定住自立圏:「中心市」に機能を集約 「全市町村整備は困難」 - 毎日jp(毎日新聞)

この毎日新聞の社説にも書かれている通り、これまでの日本の地方政策の根っこには、「すべての市町村にフルセットの生活機能を整備しなきゃいけない」という強迫観念とも言える前提があったと言える。

平成の大合併だって、ざっくり言ってしまうと、「すべての市町村にフルセットの生活機能を整備しなきゃいけない」という強迫観念と、「でも、国も自治体もお金が足りない。せめて市町村の数を減らしたらなんとか整備できるんじゃないか」という思惑の賜物と言えるだろう。
だからこそ、自治体を「大きく」「少なく」することに執着した。

今回の報告書の一番大きな意味は、この「すべての市町村にフルセットの生活機能を整備しなきゃいけない」という前提を疑ってかかった、あるいは強迫観念を捨て去ったということにあると思う。

「合併しなくても、助け合える、補いあえる道、そして自立する道はあるはずだよ。」と。

その意味では、私個人としては(若輩者が言うのもなんだけど)評価できるのではと思った。

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が、以下の記事で、岩手県田野畑村の村長が懸念しているように、具体的な政策次第では、定住自立圏の「中心市」だけ栄えて、周辺の町村が廃れるというシナリオも、十分考えられる。

宮古・下閉伊地域の拠点、宮古市まで車で約1時間を要する田野畑村の上机莞治村長は「便利になる自治体に人口が流れ、周辺部の過疎はさらに進むのではないか。定住に苦心する地方の実態が理解されていない」と批判的にとらえる。
町村部に広がる懸念 政府の「定住自立圏」構想 - 岩手日報

こういったシナリオにならないためには、自治体間の連携・協調が欠かせない。

地方の首長は、この「自治体間の連携・協調」がこれまでも機能しなかった重い現実を身を持って知っているからこそ、この構想が「成功シナリオ」を描けるのかということに疑問を感じているのだろう。

この構想を、どう具体化していくのか、それがキモ。